勝負
昨夜たまたま観たNHKの番組。
達人と言われるふたりの料理人を追っていた。
ひとりはオバマ大統領も安倍首相と訪れた寿司の名店「すきやばし次郎」の店主、91歳の小野二郎氏。
もうひとりは、70歳の天ぷら職人早乙女哲哉氏。
ふたりは分野は違えども、料理人としての腕を認め合う友人でありライバルだという。
意外ではあるが、小野氏は若いころはそんなに目立った職人ではなかったという。
そんな小野氏が、若くて凄腕の天ぷら職人がいると聴き店を訪れる。
その後、早乙女氏も小野氏の店に通いだす。
早乙女氏の言うには「五千回は通ったねぇ。数千万円使ってるよ。」とのこと。
早乙女氏が「すきやばし次郎」の引き戸を開ける。
ランチタイムである。
二郎氏は特に驚くでも歓待するでもなく淡々。
そりゃ週に二、三回くらいは来てるんだろうし、当然と言えば当然。
二郎氏の正面からひとつずれた斜め前に座るのが常。
そこで二郎氏の握り方を毎度観察する。
なにも言わなくても20貫の寿司が次々出てくる。
それをなにも言わずに口へ運ぶ哲哉氏。
双方無言。
しかしもちろん不穏な空気はない。
ナレーションの言葉を借りれば「無言の会話」だそうだ。
20貫を食べ終わると長居するわけでなく、すぐ立ち去る。
もちろんアルコール類なんかもとらず、おいしい物を食べてる雰囲気などまるでない。
「勉強」という言葉しか思いつかない。
一回三万円の勉強。
すごいよ。
一方の二郎氏も月に一度の割合で哲哉氏の店を訪れる。
食材によって揚げ方はもちろん違うし、その腕は段違いだそうだ。
たぶん私なんか生涯味わうことはないだろう。
カウンターを挟んでのふたりの料理人はまさしく戦っていた。
真剣勝負だった。
そしてどちらもが勝者だった。
深い、深すぎる世界である。
※再放送は17日(水)午前0時10分からです。興味ある方はぜひ。
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