2018年11月

勝村翔平

ラストを飾るのは、この男。

プロ部門「勝村翔平」

 

 

今までの10試合は、全敗。

試合で勝つことの難しさはよくわかる。

でも、この男の場合なら勝てた試合もあったはず。

では、何故勝てなかったのか。

 

気持ちの強さは群を抜いている。

周囲を巻き込んで、自分のテリトリーに引き込む精神力たるや持って生まれた資質なんだろう。

だが、いやだからこそかもしれない。他の選手と比べて圧倒的に練習量が少ない。

おそらくは、それが原因だったのではないか。

 

試合というのは、怖いものだ。

相手を倒すために、毎日練習してきた者同士が闘うのだから。

だからこそ、その怖さを少しでも軽くするために練習をして自分に自信をつける。

それが、技術や根性につながって勝利を生むのではないだろうか。

 

攻撃をもらって、ダウンをしても立ち上がり、意識のほとんどないまま闘う選手を何度も見てきた。

それは日々の練習を頑張り、それが積み重なって心が強くなっていくから出来たことなんだと思う。

心が弱ければ、意識のないまま立ち上がることは不可能だ。

 

そういうことが出来る選手は、感動を呼ぶ。

勝ち負けに関係なく、見ている人の心に届く。

 

 

この日の翔平はまさにこれだった。

 

1ラウンド目にダウンを奪われ、判定では明らかに負けている。

2ラウンド目も、優位には立てなかった。

しかし、3ラウンド目。怒涛の攻めを見せる。

 

相手選手の反撃をくらいながらも、前へ前へ出続ける。

相手選手も、ついには反撃する気力も折られ、前へ出続ける翔平に押される。

翔平は、完全に心で勝っていた。

見ている人にもこの男の心が伝わり、場内には大歓声が沸き起こる。

 

 

結果は判定負けに終わったが、見ている人の記憶にしっかりと焼き付いたはずだ。

 

そして、試合を終えた両者は大歓声に包まれていた。

 

 

試合後、ほとんどのジムの会長様からお褒めのお言葉をいただいた。

 

「なんで10敗もしているのかわからない」

「ええもん見せてもらった。ありがとう」

目が肥えている方から、こんなお言葉をいただけることはそうそうない。

 

試合の中でのルールでは敗けたが、心では負けなかった翔平。

お前の勝ちだ。

 

 

あとは練習をしっかりやって、技術を磨けばお前は敗けなくなる。

気持ちの強さは証明した。

次は、キックボクシングの技術で魅せてくれ。

 

勝って、喜びの心をみんなに伝えよう。

トシ

続いて、セミプロ部門。「トシ」

 

いつもニコニコしていて、楽しそうに練習している。

誰にでも同じスタンスで関わり、特に相手との距離感をとても大切にしている。

 

ミットも率先して持ってくれて、いつも助けてくれるいい奴だ。

可愛い子にはすこぶる弱く、一緒に街を歩いているといきなり女性に声を掛けるすごい奴だ。

 

 

試合開始。

今日のトシは、何かが違う。

纏っている気の様なものが出ている。

 

何というか、空間すら支配しているような空気感だ。

 

相手の攻撃は、全くトシに届かない。

開始1分。宣言通りの右ストレート一閃。

相手はリングに沈んだ。

 

 

先日、ある先生と飲みの席でこんな話をしていた。

 

勝負に勝つには、心技体。これはもちろん重要なのだが、それを超えるのがその空間を支配するオーラ。

それが相手に勝っていれば、技体で負けていたとしても勝機は十分にある。

 

僕もそう思う。

 

トシは技術もあると思うが、この日は完全にオーラで勝っていた。

強かった。

 

 

後日練習に来た彼は、プロとのスパーリングでボコボコに殴られていた。

「現実は甘くないですね」と、ニコニコして言っていた。

 

清水くん

書かない日が続くと、どうも腰が重くなる。

 

無理やりにでもパソコンを開かないとだめですね。

 

 

セミプロ部門、1発目は「清水くん」。

鋭い目つきがそう思わせるのか、クールな印象。

だが、人懐っこく誰にでも気さくに話しかけ、人の悪口などは絶対に言わない。

彼の働く会社でも人望が厚いのだろう、10名ほどの社員さんが応援に来てくれていた。

 

仕事も忙しく、毎日練習に来れないので、少しの空いた時間でも来れるようにとジムの近くに引っ越してきた。

自転車で来る姿が、なんとなく面白い。

 

 

試合開始。

 

開始早々、相手選手のパンチをもらい、膝が落ちてしまった。

すぐに立ったものの、ダウンを宣告される。

 

それに焦ってしまったのか、それとも効いているのか、いつものフットワークがみられない。

打ち合いに持ち込まれ、パンチが当たり少しふらついてしまった。

アマチュアは、危険性を重視するためにダウンを取るタイミングが早い。

これによって、2度目のダウン。

この日の試合は、2ノックダウン制。

 

敗けてしまった。

 

 

今までの試合経験は3試合で、1勝2分け。

3試合とも、危ない場面はほとんどなく、安心して見ていることができた。

ボクシングの経験があり、フットワークなどは見事だった。

 

今回のリングは狭く感じた。

それにより、フットワークが制限されてしまったのか。

序盤のダウンが、思いのほか効いてしまっていたのか。

試合の進行のタイミングで、アップなどをする時間がなく、心の余裕が生まれなかったのか。

それとも、相手選手が強かったのか。

 

色んな理由を探してしまうが、敗けてしまったものは仕方がない。

また次、頑張ろう。

 

 

 

 

鬼に金棒、よしきに笛

さて、お次はセミプロ部門。

 

と、その前にまたまた「よしき」の話。

 

彼は試合が終わっても、毎日練習に来ている。

試合前よりも、来る頻度が上がっている。

試合を経験して、何か感じるものがあったのかな。

 

毎日来る彼に、頑張るやん。と、言ったら「ノリっすね」との返事。

さすが、その本質は変わらない。

 

しかも、この前なんて首から笛を下げての登場。

「おいーっす!」と、元気いっぱいの挨拶にすぐに彼だと分かり、他の会員さんのミットを持っていた僕はそちらを振り返らずに毎度!と、返事。

その直後、「ピー―!」との聞きなれない音に驚いて振り返ると、彼が嬉しそうに笛を吹いているではないか。

 

鬼に金棒。よしきに笛。

うちのジムにはすごい奴が多い。

 

 

双子の女の子もいるのだが、その子達もすごい。

 

僕の事を、「会長」やら「館長」やら「船長」などとその時の気分で呼ぶ。

帰るときなんて「会長またね~」と、元気に2人で帰って行く。

2人の声は、ジムから遠く離れても聞こえてくる。

 

よしきも、双子も20代前半。

 

全く嫌味の無い性格で、みんなから愛されている。

 

可愛い息子と娘みたいなものだ。

 

 

会員さんみんな個性があり、それでいて嫌味がない。

皆のことを、ファンになっている自分がいることに気づいた。

 

いい人ばかりの集まりに、感謝。

 

 

セミプロ部門は次回。

 

 

勝ちと敗け

先日、ABWという興行に出場させていただきました。

 

アマチュアからプロまで、その日に一緒に試合をやるという珍しいスタイルの興行でした。

うちのジムからはプロアマ含めて5人が出場し、みんな一丸となって試合に臨むことが出来たのでいい興行だったと思います。

5人の中で勝ったのは、2人。負けが3人。

やはり勝つのは簡単ではない。

 

 

まずは先方、アマチュア部門「原田さん」。

40歳からキックボクシングを始めて、48歳になった今も常に向上心を忘れず頑張っている。

普段の練習時間は短い。なぜなら、お仕事が超多忙だからだ。

それでも、少しでも練習に来るお姿は立派。

その努力が形になって実ることを願う。

 

試合開始。パンチと蹴りをいいバランスで出す。

パンチも相手に当たるが、少し浅い。

だが、手数は十分だ。

 

しかし、相手選手の真っすぐなパンチがよく当たり、頭が後ろに弾ける場面がしばしば。

決定打もなく、そのままの展開で試合終了。

残念ながら、判定負けだった。

 

48歳での出場。忙しいお仕事な為、練習時間が満足にとれるわけでもない。

それでも試合に挑戦し、臆することなく手数も出ていた。

カッコよかった。

試合後、「また挑戦します!」とのお言葉。

また頑張りましょう。

 

 

続いて、アマチュア部門「よしき」。

スーパー元気な20歳。

口癖が「バチバチっすよ」な、憎めない奴。

経験半年で初試合。口癖通りバチバチで行けるか。

 

試合開始。

いきなり思い切りのいい、右ミドルを出す。

と、そのままの勢いで攻め続ける。

公言通り、バチバチの打ち合いに臨んだ。

2R、回転の速いパンチについに相手選手も失速。

初試合ながら、気持ちのいい試合をし勝利を勝ち取った。

リングを降りた彼に、疲れたか?と聞くと、「まぁまぁっすね」と、お調子者の彼はいつもの調子を崩さない。

すごい奴だ。

 

 

余談だが、その日の試合には小学生も出場していた。

その子の靴がシュンソクというものらしく、それにくいつくよしき。

「それ、シュンソクっすよね?僕も履いてましたよ!」と、小学生に話しかけていた。

その子はボクシングでの出場だったので、パンチのみ。

そんなこと知りもしないよしきは、その子を鼓舞するつもりで「バチバチ蹴って行きましょうよ!」と、言っていたら「だから蹴りはないんだって。訳の分からないこと言わないでよ」と、言われていた。

それでも、何のことか分からず「いやぁ、頑張っちゃいましょうね!」とニコニコして言っていた。

すげぇぜ、よしき。

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